頭の中にある事業アイデアを、誰かに説明できる形にしたい。
でも、いざ事業計画書を作ろうとすると、「そもそも事業計画書とは何を書くものなのか」「何から始めればよいのか」で手が止まってしまうことがあります。
顧客、商品、価格、集客、売上、リスク。考えることが多くて、最初からきれいにまとめようとすると、かえって難しく感じるかもしれません。
事業計画書は、最初から完璧な資料として作るものではありません。
自分の事業を前に進めるために、考えを整理し、次に何を確認すればよいかを見えるようにする道具です。
そんなとき、AIは「正解の事業計画書を作ってくれる相手」ではなく、「考えを整理する壁打ち相手」として役立ちます。
この記事では、はじめて事業計画書を作る個人事業主、ひとり社長、副業準備中の人に向けて、事業計画書の基本を確認しながら、AIと一緒にたたき台を作る手順を紹介します。
目次
事業計画書とは、事業の考えを整理するための書類

事業計画書とは、これから行う事業について、誰に、何を、どのように届け、どう続けていくのかを整理した書類です。
難しく言うと、事業の目的、顧客、商品・サービス、売上の考え方、実行計画、リスクなどをまとめたものです。
ただし、はじめて作る段階では、難しい経営用語をたくさん使う必要はありません。
まずは、次のような問いに答えるメモだと考えると分かりやすくなります。
確認チェックリスト
- どんな事業をしたいのか
- 誰に届けたいのか
- その人のどんな悩みを助けるのか
- 何を提供するのか
- どうやって売上を作るのか
- まず何から始めるのか
- どんな不安や確認事項があるのか
つまり、事業計画書は「人に見せるためのきれいな書類」というよりも、自分が次の判断をしやすくするための道具です。
融資、補助金、投資などに使う場合は、それぞれ求められる形式や確認事項があります。
しかし、最初の段階で大切なのは、立派な資料を作ることではありません。
頭の中にあるアイデアを外に出し、「今、何が決まっていて、何がまだ分からないのか」を見えるようにすることです。
最初は短くてかまいません。
1枚のメモでも、箇条書きでも大丈夫です。あとから見直しながら、少しずつ育てていけばよいものです。
AIに任せられること、人が判断すること
事業計画書づくりで大切なのは、AIに全部を任せきらないことです。
AIは、考えを整理したり、抜け漏れを見つけたり、文章に整えたりするのが得意です。一方で、「この事業を本当にやるのか」「誰に届けたいのか」「どれくらいの価格にするのか」といった判断は、最終的に自分で確認する必要があります。
整理すると、次のようになります。
| 項目 | AIに頼みやすいこと | 自分で判断すること |
|---|---|---|
| 事業アイデア | 言葉の整理、項目分け | 本当にやりたい事業か |
| 顧客 | 想定顧客の候補出し | 実際に届けたい相手は誰か |
| 提供価値 | 強みやメリットの整理 | 何を一番大切に届けるか |
| 収益 | 価格や売上の考え方の整理 | 現実的な数字か |
| 実行計画 | やることの順番整理 | 自分が実行できる内容か |
| リスク | 抜け漏れの確認 | どこまで許容できるか |
AIは便利ですが、事業の責任を代わりに持ってくれるわけではありません。
だからこそ、「答えをもらう」のではなく、「考えを深めるために使う」ことが大切です。
最初にAIへ渡すのは「誰に何を届けたいか」

事業計画書を作るとき、いきなりAIに「事業計画書を作って」と頼むと、一般的な文章になりやすくなります。
最初に渡したいのは、きれいな情報ではありません。
まずは、自分の言葉で書いた一文です。
たとえば、次のような形です。
私は、忙しい個人事業主に向けて、毎月の経理作業を楽にするサポートサービスを提供したいです。
私は、子育て中の人に向けて、自宅で学べるオンライン講座を作りたいです。
私は、地域の小さなお店に向けて、SNS投稿を続けやすくする支援をしたいです。
この一文があるだけで、AIは事業計画書に必要な項目を整理しやすくなります。
まだあいまいでも大丈夫です。最初の目的は、完璧に説明することではなく、考え始める入口を作ることです。
AIと事業計画書を作る基本手順
ここからは、AIと一緒に事業計画書のたたき台を作る流れを見ていきます。
難しい言葉を覚えるよりも、順番に考えることを大切にしてください。
手順1:事業アイデアを一文で書く
まず、自分の事業アイデアを一文で書きます。
うまく書けない場合は、次の型を使うと整理しやすくなります。
私は、[誰に]向けて、[どんな悩みや目的]を助けるために、[何を提供する]事業を考えています。
例です。
私は、ひとりで店舗を運営している人に向けて、集客の負担を減らすために、SNS投稿文の作成サポートを提供する事業を考えています。
この段階では、文章が少し長くても問題ありません。
AIに見せる前に、自分の中のアイデアを外に出すことが大切です。
手順2:AIに必要な項目を整理してもらう
次に、AIへ「この事業計画書に必要な項目を整理してください」と相談します。
使える依頼文は、次のようなものです。
次の事業アイデアについて、はじめて事業計画書を作るために必要な項目を整理してください。 事業アイデア: [ここに自分の一文を入れる] 条件: ・初心者にも分かる言葉で説明してください ・最初は短い事業計画書にしたいです ・顧客、提供価値、収益、実行計画、リスクを含めてください ・まだ決まっていないことは、質問として出してください
この依頼をすると、AIは考えるべき項目を並べてくれます。
ポイント
大切なのは、出てきた内容をそのまま正解にしないことです。
「これは合っている」「ここは違う」「まだ分からない」と、自分の感覚で確認しながら進めます。
手順3:顧客と提供価値をはっきりさせる
事業計画書で特に大切なのは、「誰に」「何を届けるのか」です。
ここがあいまいなままだと、価格、集客、商品内容も決めにくくなります。
AIには、次のように相談できます。
この事業アイデアについて、想定される顧客を3パターン出してください。 そのうえで、それぞれの顧客が抱えていそうな悩み、求めていること、提供できる価値を整理してください。 事業アイデア: [ここに自分の事業アイデアを入れる]
AIが出した顧客候補を見ながら、次のように考えてみてください。
- 自分が本当に助けたい相手は誰か
- その人は実際に困っていそうか
- 自分が提供できることと合っているか
- お金を払ってでも解決したい悩みか
ここはAIに決めてもらう場所ではありません。
AIに候補を出してもらい、自分で選ぶ場所です。
手順4:収益の形をざっくり考える
次に、どう売上が生まれるのかを整理します。
最初から細かい売上予測を作る必要はありません。まずは、収益の形をざっくり考えます。
たとえば、次のような項目です。
- 何を販売するのか
- いくらで提供するのか
- 何人に届ける必要があるのか
- 継続購入があるのか
- 毎月どれくらいの費用がかかるのか
AIには、このように頼めます。
次の事業アイデアについて、収益の考え方を初心者向けに整理してください。 事業アイデア: [ここに自分の事業アイデアを入れる] 知りたいこと: ・販売する商品やサービスの候補 ・価格の考え方 ・毎月の売上を考えるための簡単な計算例 ・かかりそうな費用 ・数字を考えるときの注意点
ただし、AIが出す数字はあくまで考えるための例です。
実際の価格、費用、売上見込みは、自分の状況や市場を確認しながら決める必要があります。
融資、補助金、投資判断などに使う場合は、必要に応じて専門家や公的機関の情報も確認してください。
手順5:最初の実行計画を作る
事業計画書は、書いて終わりではありません。
次に何をするかが分かることが大切です。
最初の実行計画は、細かすぎなくてかまいません。まずは、今月やること、来月やること、3か月以内に確認することを整理します。
AIには、次のように相談できます。
次の事業アイデアについて、最初の3か月でやることを整理してください。 事業アイデア: [ここに自分の事業アイデアを入れる] 条件: ・ひとりで進める前提です ・無理のない行動量にしてください ・1か月目、2か月目、3か月目に分けてください ・それぞれの月で確認すべきことも入れてください
ポイント
ここで大切なのは、「全部やる計画」ではなく、「最初に試せる計画」にすることです。
一人で事業を進める場合、時間も体力も限られています。実行できない計画よりも、小さく始めて改善できる計画のほうが役に立ちます。
手順6:リスクと不安を洗い出す
事業計画書には、前向きなことだけでなく、不安やリスクも書いておくと役に立ちます。
リスクを書くのは、怖がるためではありません。
事前に気づいておくことで、対策を考えやすくするためです。
AIには、次のように頼めます。
次の事業アイデアについて、考えておいたほうがよいリスクや不安点を整理してください。 事業アイデア: [ここに自分の事業アイデアを入れる] 条件: ・不安を煽る表現ではなく、冷静に整理してください ・顧客、収益、集客、運営、法律やルール面に分けてください ・それぞれに対して、最初にできる確認方法も提案してください
出てきたリスクを見て、すべてを今すぐ解決しようとしなくても大丈夫です。
まずは、「何を確認すればよいか」が分かれば前進です。
法律、税務、契約などが関わる場合は、AIの回答だけで判断せず、専門家や公式情報を確認してください。
手順7:短い事業計画書にまとめる
ここまで整理できたら、AIに短い事業計画書の形へまとめてもらいます。
最初のたたき台は、1〜2ページ程度の短いもので十分です。
依頼文の例です。
ここまで整理した内容をもとに、はじめての事業計画書として読みやすくまとめてください。 条件: ・専門用語を使いすぎないでください ・長すぎず、最初のたたき台として使える形にしてください ・次の項目で整理してください 1. 事業の概要 2. 想定する顧客 3. 提供する価値 4. 商品・サービス内容 5. 収益の考え方 6. 最初の実行計画 7. リスクと確認事項 8. 次に決めること
AIがまとめた文章を読んだら、必ず自分の言葉に直してください。
少し違和感がある表現、言い切りすぎている部分、自分の考えとずれている部分は修正します。
事業計画書は、AIが作った文章ではなく、自分の判断を整理したものにしていくことが大切です。
はじめての事業計画書に入れたい基本項目
最初の事業計画書は、次の項目があれば十分に始められます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 事業の概要 | どんな事業をするのか |
| 顧客 | 誰に届けるのか |
| 顧客の悩み | その人は何に困っているのか |
| 提供価値 | 何が楽になるのか、何が良くなるのか |
| 商品・サービス | 具体的に何を提供するのか |
| 収益 | 何をいくらで売るのか |
| 集客 | どうやって知ってもらうのか |
| 実行計画 | 最初に何から始めるのか |
| リスク | 何を確認しておくべきか |
| 次の判断 | 次に決めることは何か |
すべてを完璧に埋める必要はありません。
分からないところは「未定」「確認する」と書いておけば大丈夫です。
むしろ、分からないことが見えるようになることも、事業計画書を作る大きな意味です。
AIと作るときに気をつけたいこと

AIを使うと、文章はすぐに整います。
そのため、まだ考えきれていないことまで、完成したように見えてしまうことがあります。
特に、次の点には注意してください。
確認チェックリスト
- AIの文章をそのまま正解にしない
- 実際の顧客の声を確認する
- 売上や費用の数字は自分で見直す
- 法律、税務、契約に関わることは専門情報を確認する
- 見栄えのよい資料作りを目的にしない
次の一歩
事業計画書は、きれいに書けたかどうかよりも、次の行動に使えるかどうかが大切です。
「この計画なら、まず何を確認すればよいか分かる」
そう思えたら、最初の事業計画書として十分に役割を果たしています。
まずは一文から始めてみる
事業計画書づくりは、大きな作業に見えます。
でも、最初の一歩はとても小さくて大丈夫です。
まずは、次の一文を書いてみてください。
私は、[誰に]向けて、[どんな悩みや目的]を助けるために、[何を提供する]事業を考えています。
書けたら、AIにこう相談してみます。
この事業計画書に必要な項目を整理してください。 事業アイデア: [ここに自分の一文を入れる] 初心者にも分かる言葉で、最初に考えるべきことを順番に教えてください。
最初から完璧な計画書を作る必要はありません。
短く書き、AIと一緒に整理し、自分で判断しながら少しずつ育てていく。
次の一歩
それだけでも、頭の中にあったアイデアは、次の行動につながる計画へ変わり始めます。



